この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第20章 対面
 

「……お前、何者だ?」


 突如力を緩めたギルから出たのは、感嘆でも失望でもなく。

 猜疑心を溢れさせた、疑問系のもの。



「ただの武人じゃないな。ただの武人にしては、修羅場慣れしすぎている」


 小さな目をさらに細め、研ぎ澄まされた刃のような剣呑さを強めた瞬間。


「え、猿!?」


 サクがイルヒの手より小亀……基、白イタチを取り上げ、ギルの頭に乗せたのだ。


 同時にその場ですくりと片膝をついて、片手拳を押さえるような武官のポーズを取ると、ちらりとユウナを見た。


 ユウナにはわかった。


 "姫様、素性を明かします。よろしいですか?"


 サクがその必要があると判断したのなら、拒むつもりはない。どこまで効力を持つのかわからぬ肩書きだけれど。


 小さく了承の意で頷くと、サクは会釈してギルに言った。


「俺の名前はサク=シェンウ、父ハン=シェンウより代わった玄武の武神将だ。そしてあちらが黒陵国玄武の祠官のご息女、ユウナ姫である」


 凜としたその声に、場がざわりとざわめく。

 ユウナもまた、祠官の娘らしく、腰を落として下衣の両裾を摘まみ、優雅な仕草で頭を垂れた。



「ふへぇ……お嬢が、本当のお嬢……。だったら、小亀ちゃん……玄武っていう神獣!? テオン、知ってた!?」

「し、知らない……。どうしよう僕……、知らないでお姉さんに色々……」

「おい、武神将って、ジウと同じ悪い奴か?」

「いや、ユウナと一緒にいるから悪い奴ではないと思うけど」

「だよな、ユウナが悪い奴だったら、僕達助けてくれないよな」

「だけど玄武の武神将って、馬鹿なのか? それとも馬鹿なふり?」

「シバに随分怒られてたよな。シバはそれより強いの? あ、だけどひらひら避けてたし。ただの猿じゃないんだ」

「猿の武神将だ」


 子供達のひそひそ声には、ユウナを称賛する響きはあるにせよ、サクの賛辞はあまりなく。

 ハンならば名前だけで誰もが萎縮するというのに、自分では子供すらその効果がなく、猿止まり。"ああやっぱり。凄いひとだったんだ"という声を僅かに期待していたサクが、ひと知れず舌打ちする様子を、誰も気づいてはいなかった。

 
/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ