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吼える月
第20章 対面
「そんなことより早く貴方に理解を求められる方法がある」
「なんだと?」
「ひとつ教えて。蒼陵自慢の高級染め粉。海水で落ちないほどに定着してしまったのなら、それを落とす方法はどうすればいいの?」
「あ?」
「姫様!?」
「サク、黙って!!」
「それならば、純度の高い酒に浸かれば落ちるはずだ。たとえばこれのような…」
そう答えたのはシバだった。胡乱ながらも視線を向けたのは、ここに到着する前にギルが飲んでいたと思われる、強い酒が入った大きな樽。
それを見て、ユウナは落胆したため息をつくと、サクを見た。
「サク、手っ取り早くよろしく」
「姫……」
「サク、お願い」
意味することを知ったサクは、歯軋りをしてギルを思いきり睥睨すると、ユウナの腕を掴んで、シバの横にある酒樽に赴き、両手で持ち上げた。
シバやギルが身構える前で、サクは……ユウナが持ち上げられないその樽を、その場で座り込んだユウナの頭上にかけたのだった。
「てめぇら、俺の酒に――っ」
「ギル、見てろ」
怒り出すギルを止めたのは、シバ。
そして子供達は、ずっと言葉を失ったままだった。
黒から銀へ――。
短いユウナの黒髪が、次第に輝き煌めき出す。
それは見事とでも言うべき、神秘的な変貌だった。
誰もが息を飲むほどに、その髪の色はユウナの美貌を冴え冴えしいものにさせていた。サクですら、惚けてしまう……それがユウナに与えられた色。
"光輝く者"が忌まわれても、この美しさは崇高で神々しい。
どこからか、ほぅっというため息が漏れた。
それは拒絶ではないと感じたユウナは、救われた気分になって微笑む。
「頼む……」
サクが震えた声を出した。
「テオン、皆を連れてここから出てくれ」
あれほど慕っていたユウナに、罵声が飛び交うのは嫌だと……サクは、テオンを使って子供達を退出させた。それをギルもシバも止めなかった。
「ありがとう、サク……」
ユウナが儚げに微笑むと、サクは震えた唇をくっと噛んで俯いた。