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吼える月
第20章 対面
 
 

 サク同等の強い力を持ちながらも、倭陵ではどの国においても、禁忌とされる……"光輝く者"であるシバ。


 サクは、どう見てもジウそっくりなギルではなく、冷ややかな美貌を持つシバの方を、ジウの嫡男と呼んだ。


 突然ふってわいたリュカとの偽の婚姻話に、きっとサクなりに混乱して間違ってしまったんだと、ユウナは思った。ありえない。ギルはあんなにジウにそっくりで、シバはまるでジウに似ていないのだから。


 いずれサク自身過ちに気づくだろうと待っていたが、サクは片膝をついてシバを見たまま訂正の言葉を続けようとはしない。


 やがて、口を開いたのは――。


「船で、ジウの子供はギルだと聞いていたはずだ」


 抑揚のないシバの声は、僅かな動揺も感じさせない。


「お前は、俺のことジウにそっくりだとほざいていなかったか?」


 ギルもまた、その口調からは感情を窺うことはできないが、ただ……、ふたりは愉快そうだと、ユウナは感じた。

 それは視覚や聴覚を経由しない、あくまで直感のような閃きではあったが、気のせいだと笑って却下できなかった。


 ふたりは、反応しているのだ、サクの言葉に。

 冗談や否定するのではなく、真面目にその理由を知りたがっている。


 なぜ?

 まさか、サクが言ったことは真実なの?


 改めて驚愕に満ちた顔をしたユウナの視界の中、


「慣れてねぇ言葉遣いもその姿勢もやめろ。反吐が出る」


 不快そうに顔を歪めたギルに従い、サクがふたり同様立ち上がる。


 頭の高さ的に言えば、そこには上下のない、同等の立場だ――。
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