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吼える月
第20章 対面
同じ場での会話を許されたサクは、落ち着いた声を出した。
「武神将の直系というのは、生まれ持った血の中に神獣を感知する力があるらしい。ただしそれは、武神将として開花できる状態であれば、の話。実際俺は、今まで神獣の力など感じたことはなかった。
だが、シバ。お前は感じられるんだろう?」
サクの目がまっすぐシバを捕らえる。
シバは微動だにせず、ただサクの視線を反射するだけ。
シバの口から答えが出ないことはサクにも予想していたようで、にやりと口元で笑うと、まだ強張ったままのその顔にうっすらと追いつめる側のあくどい表情を織り交ぜながら、話を続けた。
「そして、神獣の力を血に宿す者達同士は、なにかの反応があるらしい。無性に苛立つ、神経質になる……そんなものを含めて、とにかくざわざわと悪寒のように、"気になる"存在になるらしい」
確かに、シバはサクを気にしていた。そしてサクもシバを気にしていた。
色々と思い出す度に、あの時のふたりにそんな"絆"があったのかと、ユウナは驚きを隠せない。
「また、お前が俺に対して過敏に反応していた態度こそ、実直で冗談が通用しないジウ殿の反応と同じ。彼はその手の話に滅法弱いと、ジウ殿と仲の良かった親父から聞いたことがある。ちなみに俺は、武闘大会でジウ殿と戦ったり、何度か話をしたことがある」
ジウの息子だからといって、ジウと同じ性格になるとは限らないが、言われてみれば、頑固で融通が利かないというジウの評価は、そのままシバにも思っていたのは確か。まるで別物に思えた、だが実は共通点……。
だがどうしても、ジウ=シバにならない。ジウはギルの父だと言われた方が、しっくりくるのだ。シバがジウの息子なら、ギルはまるでだまし絵のようだ。
シバが無表情のままで言った。
「仮に。オレとお前との間に、常人では感じられない特別な"なにか"があったとして。それだけで、オレが神獣の力を感知できる理由にはならない」
そうだ。なぜサクが言い切れるのか。