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吼える月
第20章 対面
「ああ、簡単だ。お前が自分でばらしたんだ。俺も武神将になったばかり、他の武神将が傍にいる時に反応があることすらわからなかったし、実際現状お前がどんなに武神将の素質があるにしろ、本当の武神将ではねぇ。曖昧すぎる環境の中、お前のおかげで糸口を掴んだんだ。お前に感じていた、なにかざわめくこの感覚の正体の」
シバは怪訝な顔を少し右に傾かせて、サクの言葉の続きを待っている。
「姫様が昼餉の支度を始めた時、お前叫んだだろう」
――オレは鬼畜か!? その白いのを捨て、さっさと小刀を返せ――っ!!
ユウナは思い出す。あれは負傷した魚を捌けと、非道なことをシバが言い出し、丁度居合わせた白イタチが泣いているユウナを慰めにきてくれた時のことだ。
ひっかかる要素はどこにあるのだろうか。
「そして、ギル。お前は、さっき俺が頭に乗せたものをこう言い捨てた」
――まさかこの亀で"玄武"を信じろとでも言うのではないだろうな。
確かに言っていたと、ユウナはひとり頷く。あの状況でなぜサクが突然、小亀をギルの頭の上に乗せたのかわからなかったけれど。
「――シバ。お前、あの時僅かに目を細めたな。なぜだ」
「………」
「亀に見えなかったんだろう?」
シバからは答えがない。
ないということは――肯定だ。
だとしたら。
数度目を瞬かせた後、ユウナは思わず声を上げてしまう。
「亀なのに。どう見ても亀以外の何ものでもないのに!? シバには、あの小亀ちゃんがなにに見えたの!?」
目が悪い……わけでもないのなら。
「勿論、白いイタチです。そうだろ?」
シバは、なにか口を開こうとして唇を引き結ぶ。
頑なな黙秘の姿勢に、サクの言葉を否定する要素は見られない。
「え、なんで? なんでふさふさイタチと、つるつる亀が同じに見えちゃうの? シバは、イタチと亀の違い、わかってる? そこまでお馬鹿さんじゃないわよね!?」
「……違いくらいわかるわ」
馬鹿にされたと思ったのだろうシバが、不機嫌そうに言った。