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吼える月
第20章 対面
「え、だったらなんで……」
見る者の力により、姿を変幻することを知らぬユウナが感じた、素朴な疑問。それはギルもだったようで、ユウナ同様に訝しげにサクを見る。
その答えは、サクが知っていると思えばこそ。
「姫様、あの亀は特別なんです。そうです、俺が"イタ公"と呼んでいる亀とイタチは実は同じもの。玄武の力により、特別仕様のものなんです」
「なんと!!」
「イタチに見えるという奴は、武神将なみの……多大な神獣の力の影響下にある者なんです。逆に神獣の影響下が少ない者には、亀の姿としてしか捉えられない」
「だけどあたしは、玄武の力はないのに両方の姿を知っているわ」
「姫様もまた特殊なんで、ある時期、突然イタチに見えるようになるんです。それを過ぎれば、ふさふさ姿は見えません」
「だったらあの小亀ちゃんがふさふさになる時は、どんな時!? どうすればまた会えるの!? どうすれば首に巻けるの!?」
今、亀もイタチもいない。イルヒが持ち去ったようだ。
ふさふさイタチをどうしても首に巻きたいらしいユウナに、サクはしどろもどろになりながら、答えた。
「え……あ……。ま、まぁ、近く……会える、かな……? 会えると、いいなぁ……」
「すぐに会えるのね!?」
「い、一応……その予定で……」
「会えるのね!?」
「は、はい……」
その意味するところを知らぬユウナに押し切られ、サクは複雑そうに頷きながらも、どこか嬉しそうで。
そんなふたりのやりとりを知ってか知らずか、ギルとシバは怪訝な顔を見合わせて互いにぼやき合う。
「シバ、なんであれがイタチなんだ」
「ギルこそ。イルヒといい、なにを言い出しているかと思っていたが…」
そこにサクが割り込んだ。
「つまり、亀にしか見えないギルは、たとえジウ殿と同じ顔をしていても、シバ程にはジウ殿が扱う……神獣関係の力がないということ。
これで明白なはずだ、誰がより多く青龍の武神将であるジウ殿の特殊な力を引き継いでいる息子なのか。武術など、誰でも鍛えれば身につくものだからあてにはならねぇ。特殊な血統こそが親子の証拠。
まあギルの顔からすれば、まったくの他人ではないのだろうが。武神将を継げるほどの直系ではない、というくらいで」