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吼える月
第20章 対面
「がはははははは」
突如、豪快に笑い出したのはギルだった。
「おい、隣国の武神将もどき」
それは悪意が込められた、サクへの呼称――。
「亀だのイタチだの、お前の言い分は、お前が武神将という特殊な存在であるということが前提のもの。ならばお前が本当は武神将でなかったらどうなる?」
サクは目を細めた。
「つまり、イタチこそがおかしいもので、本来は亀なのだと」
ギルはにやりと笑う。
「お前は、自分の存在が武神将として真なるものか、お前が証拠にした、あの亀もどき"イタ公"とやらのなにが真の姿なのか、その真実の正当性を証明出来るのか?」
サクが武神将でなかったのなら――。
亀とみなした多くの者達の目こそ真実のもので、イタ公を根拠にしたサクの視点によって、青龍の武神将の息子とされたシバの素性もまた、揺らぐものとなる。
同時に、サク同様イタチに見えるシバもまた偽りで、さらにシバが"光輝く者"という得体の知れない"特殊"な存在である以上、連帯責任のように、シバの波長に同調していたサクもまた、得体の知れぬシバの同胞という汚名を被る事になるのだ。
誉れある武神将は、瞬時に、人より忌まれる存在になる――。
「サクは、玄武の武神将よ!! あたしが……」
「お前の目こそ、一番不確かだ。イタチにも見え、亀にも見え。どちらつかずの状態で、この武神将もどきの真偽を唱える資格はねぇ」
「そ、そんな……」
「さあ、どうする。武神将もどき。お前は、自らをどう証明する?」