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吼える月
第20章 対面
「武神将の証明に、服従の姿勢をみせてなんだと?武神将としての強さを、神獣という特殊な存在の力を出して見せはしないのか、お前は。一番手っ取り早い方法を」
神獣の力を見たいのか、ギルは不満げな声を出した。
だがサクは、再びはっきりと拒絶した。
「必要ない。武神将としての力は、姫様だけが知っていればいい。主を得た武神将として、お前に見せられるものがあるとすれば、これだけだ――」
それは、畏怖すべき神獣の力ではなく、命を捧げたいと思える程の忠誠心の表明だった。
生きるも死ぬも、ユウナと共に。
それが、武神将としての自分の存在理由だと。
公然とそう出来るのが、自分の誇りだと。
だがギルはそれに納得しなかった。
「なんだそれは。自慢をしてみせればいいじゃないか、自分は強い凄いのだと。俺達とは違う崇高な人間なのだと。それともできないのか? 力を使えないのか? 本当に武神将か!?」
苛立ったように挑発するギルの前で、押し黙っていたユウナがすっと動いて、サクの頭をふわりと両手に抱えた。
「去れ、あたしの武神将から」
ユウナの纏う空気が再び変わる――。
冷ややかな銀色が放つ異質な空気は、他者を退け突き刺すような、凍てつくような鋭さを秘めていた。
揺らぎなく、睥睨にも似たまっすぐ向かう視線に、ギルがたじろぐように一歩後ずさる。
「あたしの武神将を疑い穢すことは、あたしが許さない。
サクの力が推し量れぬ輩に、神獣の力だけが武神将だと思う輩に。神獣が認めた武神将がいかなるものかを、知った顔で語られたくはないわっ!!」
啖呵とともに、細められた目から放たれた殺気に、ギルの顔が強張った。