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吼える月
第20章 対面
「根っこの加虐的部分は慎んで、遊ぶのはよせ、ギル。このままだとお前はその顔以上のただの極悪人として、姫に制裁されるぞ。相手が誰だろうと、守るためには容赦なく噛みつく……。この姫は、お前以上の厄介な猛獣だ。お前がいつもその顔と力でものを言わせて楽しんでいる、俺達に媚びしか売らない惰弱な女達とは違う。相手が悪かったようだ。これでは、折角のお前のお節介も水の泡となる」
「え……? お節介?」
ギル以上の猛獣と揶揄されたことよりも、"お節介"という言葉が気になったユウナは、素っ頓狂な声を出した。
"お節介"……という言葉の響きに敵意は感じなかったからだ。
むしろ――。
「"真実は、語るものによって、真にも偽にもなる"」
そう言葉を発したのは、依然頭を抱えたままのユウナの手の上に、手を添えて優しく引き剥がしたサクだった。
シバ同様、愉快そうな……それでいてどこか不満そうな表情で笑うサクが、バツの悪そうな顔をしているギルを見つめた。
「つまり、今の俺達のことです。リュカがしでかしたことが真であろうが偽りであろうが、語る者次第で、真実はいつでもねじ曲げられる。逆に言えば、語り方次第で、見方聞き方次第で、いつでも真偽は逆転できる脆弱なものだと。
それを伝えるために、俺の……武神将としての証明をさせられたわけです。まあ、それに乗じたなにか魂胆はあったようですが」
「は、はい?」
馬鹿だと定評があるサクの言葉が理解ではないユウナは、サクの頭がよくなったと考えるより、自分がさらに馬鹿になってしまったのだと思った。
まったく、意味がわからない。
わかるのは、殺伐とした空気が見事に払拭されていること――。