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吼える月
第20章 対面
「シバ……。武官とは、こんなにうるさいものか? 黒陵が特別なのか」
「手紙にも書いただろう。こいつは全て"例外"、普通と思うなと。武官が、ここまでやかましくては軍隊など存在できやしない。口を上回る腕のおかげで、こいつは武官の長……軍隊を従えるまでの武神将に出世出来たのだと考えろ。
たとえ、直感だけで真実を看破する、子供と同レベルの単純馬鹿で、しかも漢(おとこ)として恥ずべき卑猥さを披露していても。さらには己の馬鹿さ加減を公言する開き直った馬鹿だから余計に馬鹿の性質(たち)が悪くても。本来ならば唾棄すべき大馬鹿であろうと。……その腕を失うのは惜しい」
「ああ。その腕と忠誠心さえなければ、こんな生意気なクソガキ、海に沈めてやるのに」
「威嚇するのはやめとけ。姫が睨んでるぞ」
「その前に俺が睨んでいることに気づけよ。毒しか吐かねぇ、海賊野郎」
サクは拗ねたような顔でシバに向き直ると、疲れたようなため息をひとつ零して訊いた。
「そっちの話に乗る前に、ひとつ確認だけさせてくれ。ジウ殿の隠し子は、シバ……お前だな」
直球で結論を強いたサクに、シバは深いため息をつき、そして口にするのも憚るくらいに心底嫌そうな歪んだ顔をして、
「あぁ」
と、ぶっきらぼうに肯定した。
「だがオレの名はシバ。姓はもたない」
サクを見つめ返す目。
……それは、憎しみが籠っていた。