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吼える月
第20章 対面
シバが否定した、青龍の武神将の正統な血統を示す、チンロン姓――。
――武神将は……決して誉れあるものではねぇぞ。
サクの頭に、父の声が蘇る。
武神将は、かつて……、祠官を経由した皇主命令で、不吉な予言回避のために危険分子である"光輝く者"を、"遮煌"と称して、正義の名の元に一斉弾圧を加えたという。
祠官に忠実な最強の武神将である父は、その命令遂行を、唯一"汚点"としてずっと後悔するほどの理不尽さがあったらしい。
青く輝くシバが生きているということは、リュカ同様……、遮煌の際の生き残りなのであろう。この国では、青龍の武神将、ジウが駆逐側の先頭に立ったのだ。
加害者である武神将の血を引く、被害者である"光輝く者"――。
一番、あってはならぬ組み合わせだろうと、サクは苦々しく思った。
ジウが見逃したのか。
それとも、ジウから生延びたのか。
シバが姓はないと断言するのは、ジウがそう言ったからなのか、それともシバ自身の意志なのか。
シバの目は憎しみに満ちている。
父に対する思慕の情はなく、他人よりさらに冷めているように思えた。
その目には、紛(まが)いなき憎悪が宿っている。
サクの記憶にあるジウは、実直で穏やかな気性だ。
だが知るのは、ジウの一面。そのすべてを知っているわけではなく。
そして、闘いともなると、人が変わったように…加虐趣味があるのかと疑うほどに、荒々しい猛々しさを見せることは、武闘大会で思い知った。
正直、あの迫力だけで殺されると思ったほどだ。
シバは、その姿ばかりを見てきたのだろうか。
ジウは、そんな姿しかシバに見せていなかったのか。
攻撃態勢にて殺気を飛ばす姿は、悪鬼も逃げ出すほどの迫力があるのは間違いない。
……サクの中の真実のジウ像の輪郭が朧で、形を掴めなかった。