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吼える月
第20章 対面
「お前、"遮煌"を知っているのか?」
シバが疑問に思ったのは、サクの平然とした態度だったらしい。
――命令とはいえ、正義心に反して……ただ髪色が違うというだけで"異端者"だと追いつめ、暴圧して殺したんだ。……倭陵の未来のためと言い聞かせて。
「ああ。親父はそれを唯一の汚点として、ずっと後悔していたようだ。武神将とは人から称賛される存在ではないと、俺に言っていたよ」
「……そうか」
シバは皮肉気な笑いを顔に浮かべた。
「そんな……武神将もいるのにな……」
その顔は、悲しみを通り越し、どこまでも儚げにサクには見えた。
シバはひとしきり笑うと、顔から笑みを消してサクに向き直る。
「大体は察しただろう。確かに"身内事情"だといえばそれまでだが、それでもあの男が俺だけではなく、蒼陵の弱者に手を出し始めた。
武神将とはなにか、今はそういう根本的な問題にまで立ち返らねばならぬ程の、国の支えが取り払われ、国が揺らぐ危機的状況に面している。このままでは……、蒼陵は老人だらけとなり、民はいなくなる」
「だから、ジウ殿を討つのを手伝えと?」
「ああ。子供達は生きるために強さと逞しさを植え付けた。それは兵力にするためではない。子供達を巻き込みたくはないんだ。あいつらは……蒼陵の未来を担う大事な務めがある」
シバは、意外に子供のことを思っているらしい。
そこから子供好きかどうかまでは読み取れないサクではあったが、船でも嫌がっている素振りはなかったことから、自らひとりを望んで子供達に関わろうとしなかったのは、単純に距離感が掴めないだけで、シバ自身に子供に対する拒絶感はないようだ。