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吼える月
第20章 対面
「一年前……。浮島実験がなされていた後に、青龍殿が海に移動、地殻変動が起り、青龍殿は渦にて断絶され、そして…ジウ殿は大人を集めて…」
サクは解せぬ顔をしながら腕を組んだ。
「集った大人は、どうやって青龍殿に行き、今どうしてる?」
「あの男が言うには、青龍殿から出される特別な船に、言うだけの人数を乗せれば、潮の流れが青龍殿に導き、さらにその時だけ渦が引いて青龍殿前に行き着いていると思う。望遠鏡で見る限りでは、青龍殿に船から人は下りている。だがその後はわからない。青龍の捧げ物として人柱になっているのか」
サクは再び難しい顔をして考え込んだ。
「どうしたのサク?」
「姫様、一年前……、黒陵で地震騒ぎありましたっけ?」
「地震? ……なかったと思うわ」
「蒼陵が大規模な地盤沈下が起きるほどの災害を、どうして隣国では感じなかったんだろう……」
「玄武の力が守ってくれていたからじゃ?」
「……互いに干渉できない、神獣の力……。だったら、青龍に異変があっても、イタ公は感じ得ないか……」
「え?」
「なあ、シバ。浮島生活をジウ殿が推奨し始めたのは、一年前の春か?」
「え、あ、ああ……確か、春だったな……」
サクの細められた眼差しは、さらに剣呑なものとなった。
「もうひとつシバ。お前はリュカを見たことがあるか?」
「例の、黒陵の新祠官か?」
「ああ」
「知らないな。美しい黒陵の智将で、黒陵の姫と婚姻するという噂だけは知っていたが……」
それを聞いてユウナが、くっと唇を噛んで俯く。
サクがユウナの手を包むように優しく握りしめると、ユウナもまた優しく握り返し、自分は大丈夫だと伝えてきた。
それに小さく笑いながら、サクは真摯な顔をシバに向けて言う。
「シバ。俺はジウ殿に会う」
「は!?」
シバの目が怒りに見開いた。
「ジウ殿の変貌には、リュカが関わっているかも知れねぇ」
「え!?」
今度は、顔を上げたユウナの目が見開いた。