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吼える月
第20章 対面
「サク、なんですって!? 蒼陵にリュカが!? でもリュカはいつもお父様と一緒に黒陵にいたじゃない。それに武闘大会だってリュカは顔出ししていないし、ハンはジウ殿と仲良くしていたけれど、リュカがジウ殿と話しているのは見たことはないわ!!」
「それは黒陵内でのことでしょう、姫様。一年前の春……、祠官がリュカを伴って、予言の夜を回避するための話し合いの場につくために、皇主の住まう皇城に赴いたことを覚えてますか?」
ユウナは昔の記憶を手繰るように、胡乱げに細められた目を忙しく動かし、やがてぱちぱちと大きく瞬きをした。
「……っ、ああ。ハンがなぜか別行動で、皇城に行った時のこと? ええ、覚えているわ、なんで一緒にいかないのかしらと、サクと言ってたわよね。あれ以来、リュカは会議に出なくなったけれど…。会議は祠官と武神将のみが出るべきものだったと……」
「そうです、あの時のことです。あれ以来、リュカは国外には出ていない。もし動いたとしたら、ジウ殿に接触出来たとしたら、好機はその時だ」
サクは、諦観のようなため息をつきながら言った。
「青龍の鎮護を解除したのは、ジウ殿だ。その結果、地殻変動が起きた。だが、ジウ殿は事前に用意していた、浮島というもので民を救う策を残していた……。
だから俺は、ジウ殿がとち狂ったようには思えないんです」
「お前は!! あの男の本性を見ていないから!!」
シバがサクに吼えるようにして、激高していたが、サクは至って冷静に、落ち着いた声を返した。
「だが、俺達が見ていたジウ殿の一面を、お前は知らない。それにな、シバ。俺の親父は、ジウ殿を頼れと言った。俺はともかく、ジウ殿と昔から親交ある親父が、見誤ることはねぇんじゃないかと思うんだ。
ま、どちらが本性かなんぞ、それこそ語り手によって変わる。だから、俺の目で確認してくる。ジウ殿が正気か狂気か、なにが本性か。蒼陵の民を苦しめる強攻策が、ジウ殿の意志で行われたものか、それとも……」
サクは天井を振り仰いで呟く。
「リュカ……。蒼陵を乱したのは、お前の計画の一部だったのか……?」
哀しそうに――。