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吼える月
第21章 信愛
・‥…━━━★゚+
「俺はね、姫様……。ジウ殿に会って、リュカが蒼陵まで乱そうとしていた事実はないのだと、安心したいだけなのかもしれません…」
施錠がなされた、監獄のような石作りの冷たい部屋。
サクの力ない声が、静寂さを伝える狭い空間に反響した。
ここに"入れられた"理由は――。
――青龍の武神将に会いに行く方法? ふざけるな。手の内晒したお前を、簡単に野放しにすると思うか?
――どうしても会うというのなら、その姫を、ユウナを置いていけ。そうすれば、青龍殿の行き方を教えてやろう。ま、渦に阻まれてなにも出来ぬとは思うがな。
――姫を置いてあの男に会うか、それともあの男に会わずにオレ達に協力するか。お前に許されたのは二択。選ぶまで、閉じ込める。テオン、イルヒ!!
シバが呼んで数秒後、バツの悪そうな顔ですぐ現れたのは、テオンとイルヒ。
――えぇと…。小亀ちゃんが、ちょろちょろ……逃げるから。こっちまた戻ってきちゃって……。あの兄貴、シバ、あの……。
――イルヒ。お前が聞いたことは、他言するな。テオンも。いいな。
ジウの甥だったとわかっても、ギルの威圧的な声とその存在感は、いつもの如く竦み上がったふたりにとっては絶対的だった。
そして――。
交渉の余地なく、シバとギルからの一方的な二択の結論を急かされ、閉じ込められているサクとユウナ。
入り早々、ユウナは言った。
自分は留守番がきちんとできるから、行けない自分に代ってジウに会い、ジウがおかしくなっているのなら正して欲しいと。
ここの連中は自分に危害は加えないと。
だがサクには、別れ際のギルが一瞬だけユウナを見た…あの好色な目がやけに気になり、さらには、光輝く者としての姿を披露したことで、美丈夫なシバとの距離が、よからぬ方に縮まるのを心配してしまうのだった。
シバの目の輝きが、ユウナの銀髪を見た時に変わったように思えたからだ。同胞と思えばこそ、ユウナとの住まう世界の垣根は取り払われ、親近感を抱いたのではないだろうか。それはユウナも然り。
そしてあの啖呵。ユウナに魅入られたのはギルだけではないだろう。