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吼える月
第21章 信愛
武神将と祠官(=主)と神獣を、信愛の絆にて強固に結ぶ、忠誠の儀――。
新生とはいえ、本物の玄武が立ち会うために、儀式に神獣を象徴した代替品は必要はなかったが、儀式後に取り交わされる互いの"一部"……既にサクの腕にはあるがユウナが選んだ腕輪と、サクが耳にしている耳飾りが、玄武本人了承の元で交換品として選ばれた。
「サクは儀式のやり方をしっているの? 昔からそういう"知識"、覚えることサクは苦手だったでしょう?」
「お節介な親父が、旅立ち際にちゃんと手紙にしたためてくれまして。たとえ荷物がなくなってしまおうと、親父の手紙の内容はちゃんと覚えてます」
「サクは昔から覚える気になると、超人並みの記憶力を見せてたものね。どうしていつも、覚える気にならないのか不思議だったけれど……」
『基本が物覚え悪いために、突発的にならないと"普通"にならないとは考えないのが、この姫のよいところだな』
「うるせぇ口に、ネズミでもつっこんでやるか!?」
「ひどい……っ」
「違います、姫様じゃねぇです、そこの……」
『はよ始めぬか。我は腹が減った。はよ、はよ!!』
サクは言いたいことを飲み込んで項垂れる。
この先、イタチの悪態をユウナにも聞こえるようにはならないだろうか。このままでは、ユウナが完全に自分を勘違いして、この想い自体を誤解してしまったらと思うと気が気でもない。
『はよ、はよ!!』
本能のままに生きるイタチの力を借りねばなさぬ武神将。そうすることでユウナをより強固に守れるのなら…。