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吼える月
第21章 信愛
 


 ユウナの昂ぶりが落ち着くまで、少し時間を要した。


 俯き加減に寝台に腰掛け、ずっと耳にぶら下がる耳飾りを触れて反対の手で涙を拭っているユウナ。それが可愛くてたまらなくて、ユウナの足元で片膝をついて眺めていたサクは、手を伸ばして銀色の髪を弄るように撫でた。


 あれだけ自分からは外すことができず、自分の体の一部と化していた耳飾りが、愛してやまないユウナに貰われたということが、くすぐったい気分になる。

 そしてあの耳飾りは父から貰ったものとして、なにより愛着あればこそ、それを握りしめて感動して泣くユウナが愛おしい。


 運命の夜、もう片方の耳飾りは、ユウナを守る力となって自分のもとから消え、結果それはイタチを生み出し、例外ばかりを受け入れて協力してくれるそのイタチのおかげで、今、ユウナの耳もとで揺れている。

 サクもまた、ユウナ同様感動の余韻が引かず、熱く火照る身体がざめくような恍惚感を懸命に押さえ込んでいた。


 耳飾りを通してひとつに結びついた――。


 それは心と体が結びついた、サクが望む性交の果てにあるような……感動的な充足感に近いのかも知れないと、サク自身思っていた。


 だから余計に、ユウナの仕草がサクの情欲を煽り、消化不良で終えてしまった行為を再開して、ユウナと…この感動のまま溶け合うように愛し合いたくなる。ユウナを押し倒してしまいそうになっている。


 武神将として初めての神聖なる儀式をしたばかりなのに、それはいけないだろうと、必死に心を抑えつけていた。

 神獣に咎められて武神将を剥奪されたら、ユウナを守る術がなくなってしまう。ユウナに知られたら、軽蔑されてしまう――。


 ユウナを見つめるサクの穏やかな表情に、時折切迫感に満ちた煩悶の色がちらつくが、サクはそれを意志の力で覆い隠し、ただユウナを包み込むように微笑み続けていた。
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