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吼える月
第21章 信愛
 

 耳飾りが契約の証である以上、どちらかが契約を破棄するまでは誰の手でもユウナの耳からは取れない。今まで玄武の力と無縁であったユウナではあったが、儀式をして耳飾りをしたことで、熱として感知できるようになったのかもしれないと、サクは考えていた。

 武神将は玄武の力を攻撃力に転じられるが、歴代の祠官はその力を結界という守りに転じている。いずれユウナもそうしたことが出来るのかもしれない。なにより彼女は、祠官の血を濃く引く存在なのだから。

 ユウナは、感動で胸が熱くなっていると思っているようで、熱に耐えるその仕草がいちいち可愛くて、サクにはたまらなくなる。


 ユウナの髪を梳かすように滑り落ちたサクの指が、頬にかかるユウナの髪を持ち上げ耳にかけた時、ユウナはぴくりと反応して、そしてちろりと上目遣いでサクを見た。


 ほんのりと上気した顔。なにか言いたげだが、言葉は出て来ない。


「どうしました?」


 思わず抱きしめたい心を我慢して、サクが微笑んだまま首を傾げて聞くと、ユウナはなんでもないというように頭を振って、また同じ姿勢に戻るが、やがて耳飾りを触っていたその手で、彼女の隣をぱんぱんと叩いた。


 隣においで、と誘っているらしい。

 サクは笑い声を響かせ、穏やかな顔で言った。


「姫様、儀式をして主従関係を結んだんです。護衛役の時のように、姫様の足元に控えるのが筋でしょう?」

「――っ!?」


 ユウナが目を見開いてサクを見た。

 無言ながら、それは彼女にとってショックなことだったらしい。


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