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吼える月
第21章 信愛
怪訝顔のサクの足に、ちょんちょんとなにかが触る。
見れば白いふさふさ尻尾だ。
『はよ、我の"祝い"を堪能せぬか。このままだと姫は辛いだけ、それに時は待たぬぞ。それとも小僧、この状態の姫をおいて出かけるか?』
サクはパチパチと数度瞬きした。
そして、行き着いた結論――。
「イタ公、まさか……姫様になにかしてたんじゃ?」
寝台の下から、今度はぬぅっとイタチが顔を出す。
もぐもぐと動く口からは、細長いネズミの尻尾がはみ出ていて、思わずサクは顔を顰めた。
そしてネズミの尻尾がちゅるりとイタチに吸い込まれる。
満足げな表情で食事を終えたイタチは、なにか得意げな顔で言った。
『姫は儀式により、契約の牙を通して小僧と同調を始めつつあるが、我の力に慣れてはおらぬ。その不安定な状態では、小僧が遠隔的に姫を護り難いだろうゆえ、多少は荒技ではあるが先に慣らそうと、姫の体の経孔に、我の力を少々強く巡らせてみたまで』
説明が長いし、回りくどい。
「つまり、姫様はどんな状態なんだ?」
ユウナは俯きながら、ひたすら我慢我慢と唱えながら、足をもじもじ擦り合わせている。
『身体が熱を持ち、少々の刺激にも過敏に反応する。しかも小僧による"消化不良"が祟って募った状態だ。端的に言えば……』
そのユウナの姿は、まるで――。
『"発情"』
「は?」
『同調している、小僧と同じ状態だ』
サクが思った通りの変化が、ユウナを襲っているらしい。