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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
「リュカ。常日頃より、非情になれと余は言ってたろう?」
リュカとは以前から面識があるのだということを匂わせ、金髪の男は嘲るように言う。
「なぜ、なぜここに……」
「お前がさっさと終わらせてこないからだ。余が進捗を見に来たのはいけないことだったのか?」
「い、いえ……」
「こいつか……、リュカ。こいつにお前は」
リュカの目に怯えのような動揺が走り、途端にかしこまったのを見たサクは、リュカに威圧的に接する不遜な男に殺気を飛ばした。
「なんだ? このうるさき蠅は」
だが男はものともせず、逆に一瞥だけで軽く弾き飛ばしてくる。
強い……なんてものではない。
相手の力量が推し量れぬのは、相手の力が未知数すぎるからだ。
人を超越した存在……だからこその、"魔に穢れし"予言の凶々しい者。
赤き月が誘う存在は、金と銀ふたりだったのか。
そして銀を従える、圧倒的な力を秘めているだろう金色。
金は光輝き、ただそこにあるだけで、すべての色を支配しようとする。
こいつは厄介すぎると、サクの額から冷や汗が垂れた。
最強の武神将である父とて、玄武の力を出しても互角に行けるかどうかわからない。ましてや自分は、玄武の力など使えぬ、ただの黒陵国の"隊長"。
「リュカ。お前が受けた屈辱忘れてはいまいな? お前はなんのために13年、耐え忍んできたのだ。こやつの言葉に揺れるというのなら、余はお前の心を鍛えねばならぬ」
「ゲイ陛下!?」
リュカが金髪の男を"ゲイ"と呼んだ瞬間、サクの体が後方に吹き飛ばされて、壁に激突した。
「サク!?」
駆けつけようとしたユウナは、途端に体を微塵にも動かすことが出来なくなった。
「お前が出来ぬことを見本として見せてやろう。まずは、右腕」
窓から降り立ったゲイが残忍な笑いを浮かべた瞬間、サクの骨がばきっと豪快に折れる音がして、サクが長い悲鳴を上げた。