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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
「おやめ下さい、ゲイ陛下!!」
リュカが金髪の男の前に、片膝をついて傅く。
「命乞いなど、軟弱な者がするものよ。左足」
ばきっ。
「ぐがあああああ」
再び遠隔の力が向けられ、サクの口から絞るような声が上がる。
「陛下、この者は陛下のお手を煩わすには値しませぬ。それならば私に」
「リュカ。お前の魂胆はわかっておる。それを見逃す余ではあらぬわ。……それ、左腕」
ばきっ。
「サク、サク――っ、いやぁぁぁぁぁぁ!!」
「やはり、余を封じた武神将ではなければつまらぬな。なんともたわいない。……飽きたわ。もう使いものにならぬのなら、ここで一気に……」
ばきばきと連続的に凄惨な音がして、サクの絶叫が響く。
サクが血に染まっていく。
「やめて、やめて、やめてぇぇぇぇっ!! あたしが、あたしが代わりになんでもするから。だからサクを助けて、サクを、サクを――っ!!」
ユウナは動けないながら、声を張り上げた。
「サクを助けてぇぇぇぇぇぇっ!!」
「……ほう、なんでもする、と?」
ゲイの顔に、邪悪な光に満ちた。
「ならば――黒陵の姫よ。
余を裏切りし憎き女の末裔よ。
玄武の祠官が隠せし、玄武の鍵を余に捧げよ」
「玄武の鍵?」
ユウナは訝り、リュカの目が見開かれた。