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吼える月
第21章 信愛
サクに捕まえられていた手首は持ち上げられ、熱く視線を交わしたまま、サクはユウナの指先を自分の唇に含んだ。
ぬるりとした舌の感触に、ユウナの身体がさわめく。
「んっ……」
妖艶さを醸しだしながら、僅かに身じろぎをした自分を見据えてくるその目は挑発的で。音をたてて激しく舌で舐め上げられれば、その舌で悶えた過去を思い出して、快感を刻まれた身体がさらに疼く。
サクに触れられたい――。
また、サクと気持ちよくなりたい――。
サクの唇から抜かれた指。サクの唇と指に繋がる銀の糸が淫らに思えてぞくぞくする。
「……我慢してるんですよ、俺…これでも。俺を動かしたいのなら、俺に理由を下さい。姫様も俺と同じく、火照って疼く体を鎮めて貰いたいのだと。俺に治療を求めるほど、切実なのだと。そこまで俺を求めているのだと」
……サクの熱情に惹き込まれそうで。
「……俺は男です。理由なく姫様に触れて欲望の捌け口にするくらいなら、この欲を押し殺します。だけど。だけどもしも……姫様が、男としての俺を求めるというのなら。降りて来て下さい。……ここまで」
サクは、ユウナの足元に胡座をかいた。
「俺が欲しくてしかたがないのなら。俺に触れられたくてたまらないのなら。俺になんとかして貰いたいのなら。俺と……熱い身体を合わせたいのなら。……姫様から来て下さい」
だからユウナは――。
「病的なまでに…我慢出来ないほど俺が欲しいのなら、俺は鎮める治療をして差し上げます」
迷いなくサクの膝の上に座った。
「あたしの身体……疼いてたまらないの。だけど治療は嫌」
「え……?」
そしてサクに抱きつきながら、ユウナは言った。
「今はそんな理由なしに、サクに触られたい。サクに触りたい。……そういうのは嫌? そういう理由なければ、サクはあたしに触れたくない?」
ユウナは鼻を啜った。
「あたしの武神将と、もっと素直な心で溶け合いたいの。駄目なのかな。武神将とこんな淫らなこと、望んじゃ……。まだあたしの心が追いついてもいないのに、こんなこと望むのはやっぱり駄目なのかな…」
サクは、たまらないというように目を瞑って、ユウナを強く抱きしめた。