この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
「この世のどんな願いでも叶える箱……女神ジョウガの封じた箱を開ける、玄武、白虎、青龍、朱雀……4つの鍵のうちのひとつ」
「恐れながら陛下」
遮るように声をあげたリュカに、冷ややかな声が返る。
「……リュカ、口出しするのなら、どちらかを殺そう。サクと呼ばれる者か、ユウナと呼ばれる者か。お前に選ばせてやる。もしも答えぬようなら、ふたり共だ」
「――っ!!」
「鍵ってなに!? あたし知らないわ」
「代々の祠官は、それぞれ外からわからぬところに鍵を隠してきた。それをリュカが13年かけてようやく、祠官から聞き出した。
玄武の鍵は……お前の純潔だ」
「純潔……?」
「鍵と言っても鍵の形をしているとは限らぬ。黒陵においては、たまたまそれが姫の処女であったということなだけ。無論、姫を襲う暴漢対策に護衛を置き、なおかつ祠官は自らの命を媒介にして隠匿してきた。
祠官の命があれば鍵はどこにでも移動出来たものが、祠官が死んだことにより……鍵は姫の胎内に残ったまま」
金糸のような長い黄金色の髪が、妖しくさざめいた。
「予定ではリュカが鍵を取り出すはずだったが、こうももたつく仕置きに、余が代わってお前の純潔を散らそう。
余の剛直に貫かれて女になること、光栄に思うが良い」
嗜虐的な光湛えた黄金色の瞳が、愉快そうに細められる。
「しばらく女を抱くことすら叶わなかった。余の濃厚な精を浴び、悦楽の果てにて鍵を与えよ」
じりと近寄る男に、ユウナは本能的な声をあげた。
それは雌としての危機感。この場で公開的に身を穢される恐怖に全身がぶるぶる震える。
「ゲイ陛下!」
「……めろよ、姫様に手出しすんじゃねぇ……よ」
全身から血の気が引き、あまりの恐怖に心臓の音だけがけたたましすぎて、もう誰の声も届かない。なにも考えられない。
だけどひとつ、今の状況でわかることがあるとすれば。
不条理な要求を飲まねば――、
「姫様に触れることは……ぐはっ!!」
「うるさい。……これで四肢の骨は砕いた。あと残るは胴……臓物のみ」
サクが死ぬことだけ。
自分のせいで、また自分の前で、大好きな者が死んでしまうことだけ。