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吼える月
第22章 不穏
「ひ、姫……っ!?」
「まぁ、いいわ。嘘つきのサクに、これぐらいで勘弁してあげる。ん~、だけど優しすぎるかしら。だったら」
もう一度噛みついたのは、サクの首筋。
くっきりとユウナの歯形がついて、ユウナは満足そうにけたけたと笑う。
「いて……っ。噛みつくなんて凶暴な姫様!! もうちょっと、ちゅっとかちゅっとか……っ!! 愛を深めた甘々な雰囲気でもいいじゃないか。なんで姫様…、終わったらあの可愛い甘えっ子じゃなくなるんだよ…。なんで俺だけ、姫様とこうしていたんだよ。
あぁ……だけど姫様はなにをしても可愛い。これって惚れた弱みだよな。………。……っ。……ああ、くそっ。また鍛錬する羽目になるじゃねぇかよ」
「サク……? なにをぶちぶち?」
「いいんです!! 姫様にはわかんねぇ、甘えたがりの男事情なんです!!」
「うん? 甘えてるの? よちよち」
ユウナが手を伸ばして、サクの頭を撫でると、サクは獣のように噛みついた。
「俺は子供じゃねぇです!! さっき姫様、大人の俺を堪能したでしょう!? あれが子供が持つモノですか!? 姫様、気持ちいいって泣いて喜んでいたじゃねぇですか。もっとごりごりしてって!!」
「……っ」
意味することを悟り、ユウナが真っ赤になって俯くと、サクは意地悪い表情を顔に浮かべて、ユウナの耳もとで囁く。
「……すっごく気持ちよかったですね。俺、精進してもっと気持ちよくできるようにしますから、またしましょうね、いやらしいこと。
……な、俺の可愛い……ユウナ?」
突然の呼び捨てにびくっと反応したユウナが顔を上げると、サクの顎にガツンと思いきり頭をぶつけてしまった。頭蓋骨と下顎骨が鈍い悲鳴を上げたのだが、互いに骨に異常を感じていないのは、生来の強さと後天的な鍛錬のせいなのか。
だがそこそこの痛みはあったようで、サクとユウナは涙目になりながら互いに違う方向に横を向いて、不安定な息を繰り返す。
「どうしよう。サクの意地悪が強くなった……」
「やべ。正気でもこんな可愛い反応されると……。俺、姫様いじめるのクセになりそうだ」
互いのぼやきは、相手に届かず。