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吼える月
第22章 不穏
「――っと、いけねぇ。このままならずっとこうしていそうだ。姫様、では、さっき言ったことを復唱して下さい」
墓穴を掘る前にサクは、話を切り上げた。
「姫様。お口がぶぅたれてますよ。覚えられないのなら、お尻を……」
「覚えてるわ、覚えてます! サクがジウ殿の元に行っている間に気をつけること。一、男は皆狼。二、子供だろうが男の子にはぎゅっとしない。三、ただしふさふさイタ公ちゃんは首に巻いてもいいが、必要以上に触らない。四、特にギルとシバとは目を合わさない、口を開かない。勝手に交流しない……ねぇ、サク。どうして男限定なの? それにギルとシバだけ、どうしてこんなに細かい禁止項目が……」
途端にサクはくわっと目を吊り上げて言う。
「姫様は温室育ちなんです! 人見知りしない性格であっても、それが逆に男には"気があるんじゃないか"と期待させるんです!! だからよからぬ事態になる前に、心構えを持つことが肝要です!!」
「期待って……。なんで子供達にも……」
「子供だって男は男です!!」
「なんでイタ公ちゃんにも……」
「イタ公だって、オスです!!」
「ええ、オスなの? 確かめてみよ……」
「いりません!! なんてところ見たがるんですか!! 俺のだけでは満足しないんですか!? だったら満足するまで俺のを……」
「サクの馬鹿あああああ!!」
ユウナは顔を両手で覆い、嫌嫌と頭を横に振った。
「本当にやべ…。可愛すぎて……クセになる……」
溺愛すればこそ。
馬鹿だとけなされたサクの、歓喜の悶えをユウナは知らない。