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吼える月
第22章 不穏
「ねぇ、サク…。ジウ殿のところに行くのはいいとして、あたし達閉じ込められているのよね。あたしを残してサクが旅立つ旨、どうやって伝えたらいいのかしら?」
きりりとした顔で尋ねたユウナ。背には依然"大きな甘えっ子"が抱きついて、ユウナ事ゆらゆら揺れている。
この部屋に来てから、神聖な儀式や淫らな戯れだけではなく、サクから色々と今後の予定は聞いたし、注意事項など打ち合わせ済み。……耳もとに囁かれながらだが。
サクの口調には、いつも通りの飄々とした一定した温度を感じるのに、抱きしめられている自分の身体の体温だけが再上昇してしまっている気がする。
最初は、昔のサクが戻ってきたようで、可愛いからとなされるがままにしていたが、サクの身体を知った女の身体は、必要以上に接触され続けると、おかしな勘違いをしてしまうという……、予想以上に厄介に出来ているらしい。
身体から伝わる熱が、濃厚な戯れを思い出させるのだ。
あれだけ淫らに果てに達して、サクに揶揄されるまでにとことん乱れたはずなのに、まだサクと肌を重ねて気持ちよくなりたいというのか、身体が疼き出す。
ああ、熱に煽られる欲は際限なく。
なんていやらしい子になってしまったんだろう――。
泣きそうな気分になって、サクに気づかれないように、とにかくできる限りさりげなく、サクから離れて平常心を取り戻そうとしているのだが、サクは普通通り喋りながらも、逃げる自分を許さない。
武神将にまでなるほど、身体を鍛えている武官相手に逃げられると思った自分が浅はかだった。
よし、それならこのまま石になろう。
石。
石。
そして目の前の石扉を目に入れて、今後の外界との接触方法の疑問がわき、気を紛らわすいい話題が見つかったと、ユウナは内心喜んでいた。
外から施錠されており、サクの手でも開かないことは、この部屋に入った瞬間に既にサクが確認済みだった。
さらに石扉に耳をすませても、外の音が一切聞こえてこないらしいということは、内部の声も外には漏れないということだ。
コンコンと叩いたり、げしげしと蹴り飛ばしてみても、大した音にならないとサクが既に証明してみせているとなれば、どうやって外の者達と意思疎通を図ればいいのだろう。