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吼える月
第22章 不穏
「「「シバ!?」」」
口を開けて固まるユウナ、サク、そして後から現れたイルヒとテオンの前で、青い煌めきを赤が混ざった紫に変色させて、シバは叫ぶ。
「イタチが鼻血を吹き出すほどの卑猥さを見せつけるとは、なんだ!!! それでもお前、武官か!?」
「いや、サクはただの武官ではなく、武神将……」
「玄武の武神将は、そこまで卑猥なのか!!!!」
ユウナの突っ込みに、シバが爆ぜ……、慌ててテオンとイルヒが、暴れるシバを取り押さえにかかり、そしてサクは、そんなふたりの制止をすぐさま取り払って攻撃をしてくるシバから逃げ回った。
「おいこら、イタ公!! お前のせいで……っ!!」
そして。
しばらく逆さまになっていたことで頭に血を上らせ、結果、鼻血を出してしまったイタチは――。
「イタ公ちゃん。仰向けになって……。この上着で血を止めましょうね」
『姫の膝は柔らかい。我は満足……』
長い尻尾を、やや力なく左右に振り……、喜び表現。
「鼻血の文句はイタ公に言えよ。つーかさ、盗み聞きしてる方が……」
「仕方がないだろう!! オレの部屋と空気孔が繋がっているのだから!! まさか"し始める"なんて、誰が思うか!! 普通、オレが突きつけた二択のどっちを選ぶか、相談をするだろう!? それじゃなくとも聞きにくいのに、お前は肝心なところで声を小さくさせて、どうでもいい卑猥なところで声を上げる。はぁ……とんでもない男だ!!」
「結局どんなことを話しているのか聞こうと、聞き耳たててたんじゃねぇか。密室に閉じ込めたのはお前だろう!?
――ちょっと待て。お前、俺と姫様がちちくり合ってたの、聞いてたのか!? はあああ!? そこから聞いてたのか!?」
「どこからだろうと、聞かせたのはお前だろうが!! ――ああ、くそっ、腹立たしい。おとなしくオレに蹴られろ」
「冗談じゃねぇって!! ひとの秘め事聞かれて、なんで蹴られる!? つーか、お前、姫様の可愛い声……」
「聞いてないっ!! あれは、発情期のメス猫の声だっ!!」
「聞いてたんじゃねぇかよ!! ああ、なんで俺……っ、行為中に盗み聞きされているの気づかなかったんだろう!! 鍛錬中に気づくとは!! お前、一発殴らせろ。姫様の声を聴いたツケを払って貰う」