この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第22章 不穏
サクに突きつけられた選択肢はふたつ――。
海の渦の中にあるという青龍殿に居る、狂ったとされるジウと会って話を聞くために、ユウナをひとりここに残すか。ユウナと共に居る代りに、ジウと闘うか。
その選択以外をとれば、ここから船で出る術はない。
ユウナを残してジウと会う――。
この選択肢においては、ギルやシバ達は青龍殿の場所はわかれども渦の解除方法がわからず、青龍殿の内部に入れる保証はないらしい。そのため、青龍殿に入る方法は独自に探さねばならない。
そして青龍殿の侵入をサクが諦めぬ限り、その間ユウナをこの砦の中に置いて行かねばならない。
好色そうなギルと、"煌めく色"に親近感を覚えたらしいシバ――不安は尽きぬけれども、ユウナと儀式をしたことでサクは遠隔的に守れる、ということをイタチから聞いているが、試してはいない。すべて離れていても力で守れるという前提で進む、ぶっつけ本番だ。
ジウと闘う――。
この選択肢ではユウナをつねに視界の中に入れておけるが、近くリュカが来た時に、リュカの動向の後にしか反応ができず、後手に回ることで不利益が生じてしまう可能性が大だ。
なによりリュカがこの国に対して、ジウに対して、先に"仕掛け"をしていないという確証が早く欲しい気持ちがあった。
サクの気持ち的には、ジウのところに行きたい――。
実際なにが起きているのか、不安の芽は実際自分の目で確かめたかった。
なによりハンが頼りにしろとしたジウが、ハンに知られずして民を苦しませている武神将になっていたと信じたくなかったのもある。
サクにとって、ハンの目は確かであったから。