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吼える月
第22章 不穏
「サク」
中々決意を口にしようとしないサクに、声をかけたのは……、サクの背中に隠れるようにして、まだ恥ずかしさが抜け切れていないらしいユウナだった。
もじもじと動きながらも、その声は凜として力強い。
「ジウ殿に会って」
声調とは裏腹に、サクの服を掴むその手が微かに震えているのは、痴態を聞かれたというただの羞恥心からではないことをサクは悟った。
サクと離れることに、なにかユウナも不安を感じているのか。
そう思えば、サクの決心が鈍る。
やはり、ユウナの傍にいて臨機応変にリュカに対処していくか……そう思い始めた時、ユウナがサクの手を掴んで、耳飾りを触れさせた。
「――!!!」
「……っ」
まだ互いの身体を結ぶ玄武の力の"同調"に慣れていないふたりは、快感のような甘い刺激に耐えるような顔を見合わせる。
それがどんな類いのものなのか、どんなに身体を疼かせるものなのかは、サクとユウナふたりにしかわからない。
「あたし、これがあるもの」
ユウナは、サクを見据えていった。
「サクの一部があたしを守っていること、あたしわかっている。あたしはサクがやり遂げられると信じてる。だからサクも、あたしを信じて」
「姫様……」
「それが"忠誠の儀"をした、今のあたし達の関係。互いが相手の足を引っ張る関係になるのではなく、主従ではありながらいつまでも対等に。それがあたしが願う、サクとの関係。あたしは、サクの重荷になるために、今ここにいるわけではない」