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吼える月
第22章 不穏
シバの顔や声には偽りの色が見られず、サクはため息をついて頭をがしがしと掻く。
「すまねぇっていうべきか? 俺……」
「3日までに帰れたらの話だ。……それよりお前、慌てた様子がないってことは、あの渦をなんとかできるとでも思っているのか? 渦だけではない、オレ達ですら顔を合わせられないジウと、会えるとでも?」
「ああ」
サクは不敵に笑う。
シバとギルは訝しげに目を細めて、サクを見つめた。
「お前は、ジウの本性を知らなすぎる」
だがサクは薄く笑うだけで。
「ジウ殿に会うために、人手が欲しい。ひとりだけでいい」
「ひとり、だけ? お前、海をなめているのか。さっき散々……。もしやオレを使う気か? それともギルを連れて、ユウナの安全を……」
「違う。3日間、姫様の安全はシバに任せた。信じるといった言葉に、二言はねぇ。姫様、俺はシバを信用します。いいですね?」
「あたしは、サクが信じるものを信じる。いいも悪いもないわ」
ユウナは朗らかに答えた。
「よろしくね、シバ」
「……ちっ。姫様、別に仲良くしなくていいんですからね。イルヒとイタ公と居て下さい、いいですね、復唱……覚えてますね!?」
「わ、わかったわ……」
そしてサクは、シバに向き直る。
「無論ギルもいらねぇよ。なにが嬉しくて、ジウ殿と会うために、ジウ殿とそっくりな、こんなむっさい男と船旅しねぇといけないんだ。俺にだって"息抜き"くらい欲しいんだよ」
「くくく。む、むっさい……っ」
「だめだよ、イルヒ。そこは笑う処じゃ……くくくく」
「俺が欲しいのは、テオンだ」
イルヒを宥めながら共に笑っていたテオンが、その場で飛び上がる。
「な、なんで僕!?」