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吼える月
第22章 不穏


 シバは腕を組んで、サクの申し出に思案し始めた。


「まあ……テオンは小回りがきくし、よくひとりでも海に出て監視を兼ねて巡回できるほど航海の腕もあり、方角もわかり。まあ、いいといえばいいんだが……」

「なんだ不服か? お前の代理勤められるだろう? 統率力があるということは、それだけの知識や実践の実力があるということだ」

「いや、意外で」


 シバは素直にサクに言う。


「ギルやオレの見張りに、テオンをユウナの傍に置こうとすると思ってた」

「ああ、見張りはイルヒで十分だ。イルヒ、兄貴の手から頼んだぞ!?」


「え、あ? あたい、どうすれば……」



「つーことで、テオンを借りるぞ」



 やがてシバが頷いた。



「え、僕……っ」


 狼狽するテオンの腕を掴み、サクがその耳もとで囁く。


 



「――っ!!!?」




 途端にテオンは驚いた顔をして、固まり……、そして「僕が船を出すよ」と小さく頷いた。ぎこちない笑みを作って。


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 "お前は巡廻のふりして好きな時に、青龍殿の内部に入っているんだろう? テオン"



 そのサクの言葉は、テオン以外の耳には入らなかった――。



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