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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
妖気にも似た、赤い光が窓から差し込まれる。
真紅の月を反射したかのような、床に拡がる染み。
その中央に横たわるのは、ユウナを可愛がった父の骸だ。
その場を舞台に選び、狂った宴の開幕を告げたのは……凶々しい金色。
その目に宿すのは、嗜虐的な支配者の艶。
……だが銀色は動かない。
「リュカ……。……姫の口に挿れろ」
リュカは動かない――。
金色に急かされても、その顔は強張ったまま。
まるで溶融できぬ氷の彫刻のようだ。
纏う空気は煌びやかなれど、その瞳は澱んでいる。
その澱みを拡げるように、さらになすりつけるように、金色は誘惑のように優しい声音をリュカにかける。
「お前はいつでも、その姫を蹂躙したかったのだろう? その姫の潤った熱い蜜壷で、あの可愛らしい声を奏でるあの口で……果てることを夢見ていたのだろう……?」
「違……っ、僕は――っ!!」
リュカの氷の仮面が皹割れ、隠しきれない動揺が顔に拡がった。
「お前が今宵に向けて色気づいたのは……鍵を奪うという理由だけではあるまい。どんな名目であれ、この女をようやく抱けると思ったからだろう? だが……お前が長らく、その邪な欲を余に隠していたのは気に入らぬ。いっそこの姫を、余の性奴としてやろうか」
「違う、違う、違いますっ!! 僕は、僕はユウナのことなんて……」
「ならば……その女の口の中で耐えて見せよ。お前が本当にこの女のことをなんとも思っていないのなら、いまこの状況に興奮などせず、萎えたまま変化はないはずだ」
「――っ!?」
金の男……ゲイは、後ろからユウナの服の衿を、ぐいと左右に開いた。
「きゃっ!!」
ユウナは思わず露わになった胸を両手で隠そうとしたが、ゲイはそれを許さなかった。
ユウナの両手首はゲイの片手に取られ、頭上にて固定される。
今まで異性に見せたことのなかった柔らかな双丘が、外気にさらされた。