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吼える月
第23章 分離
危機を感じてくれたサクの心が嬉しい。
心を熱くさせながらも、ふと疑問が漏れた。
「あたし、そこまで危機だったの?」
『俺に訊かないで下さいよ!! なぁに悠長なこといってるんですか!? ああ、こんなぼけぼけの姫様、本当に心配だ。とりあえず、そこでふて腐れているだろうイタ公を巻いて下さい。いいですね!?』
サクより先に"なにか"を感じた白イタチ。
懸命に訴えたのが役に立たず、首から外され無視されて、ぞんざいな扱いをされていたことにいじけているようではあったが、ユウナが苦笑して片手を伸ばすと走ってきて、ユウナの首に巻き付き、仲直りとばかりに尻尾でユウナの顔を撫でた。
「サク、実は今ね、リュ――」
そこで途切れさせたのは、男が苦悶の声を上げながら、薄く目を開いたからだった。
『リュ? 姫様、まさかリュ――……』
サクの声がざあざあと砂をかけられたかのような騒音に掻き消されて聞こえなくなり、同時にイタチが苦しげな声を上げる。
『やはり我の力遮る。姫。気をつけよ、この者――』
「リュカ……?」
疑問系にしたのは、男の瞳の色がリュカのような深みのある琥珀色ではなかったからだ。
それは濃灰色。
そして違和感の正体に気づく。
散らばるその髪が、黒かったからだ。