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吼える月
第23章 分離
「リュカ、とは玄武の新祠官の名前か?」
割り込んで来たのはシバの声。
「この男がリュカなのか!?」
「わから、ない……。リュカの顔なの。だけど色が違う。色が……」
「染めているのなら、お前がした方法でやって見ればいいだろう」
ギルが飲みかけていたらしい、酒の入ったグラスを男の髪に落としていく。そしてギルに目で指示されたイルヒが、酒にまみれたその長い黒髪を、手で擦り合わせるようにして揉み込めば。
「変わらない……!?」
髪の色は、銀には変わらなかった。
つまり、この髪の色は天然の色だということ。
「どういうこと……? なんでリュカと同じ顔が……」
狼狽えたユウナに、シバは言った。
「どういうことだと聞きたいのはこっちの方だ。"光輝く者"のリュカとやらがなんでこの男と同じ顔をしているんだ?
この男は、光輝く者を追いつめた"遮煌"の指揮者の皇主――
……の三男、スンユ、だぞ?」
ユウナの思考は、シバの言葉を解せなかった。
ただわかることは、リュカと瓜二つの顔をした、色だけ違うこの男は、リュカではないということ――。
リュカには兄弟姉妹はいないと昔言っていた。
それすら偽りだったのだろうか。
それとも、リュカに酷似しただけのただの他人――?
皇主の三男とリュカが、偶然同じ顔をしてたと、ただそれだけの話なのだろうか。