この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第24章 残像
まだ動かないと見た自分の予測が外れて、リュカが現れたのか。
神獣の力を超えてやってこれた?
神獣の力を感知できるシバの警戒を超えて、あの根城に?
また、そうした変調を感じる前に、ユウナからなにか胸が疼くような熱いものが流れていた理由もわからない。
それは自分がユウナに向ける恋心のような類いにも似て、まさかユウナも自分に焦がれて…など思って顔を弛めてしまったが、すぐ希望を持ってしまう自分の単純さに呆れ返って自嘲する反面、まさか別の男に抱く熱情ではと勘繰れば、途端に胸が嫉妬にもやもやして。
これではこの先なにも手につかなくなると、自分はユウナやシバを信じようと、不安要素を自己満足にしかすぎない信頼感で押さえ込み、さっさとすべきことをして少しでも早く帰ろうとしていた……矢先のことだった。
ユウナやイタチとの交信を、妨害していたのはリュカの力?
同じ力なのに、イタチは制御出来なかったのか?
そう思えば、見えない事態がもどかしくて仕方が無い。
船を出したのが早すぎたのではないかと、後悔が強まってしまう。
ああ、ユウナはどうなっているのか。
リュと言いかけたのは、なにを伝えたかったのだろう。
「――くそっ!! だから一体なんなんだよっ!!」
サクは悶々としていた。
出来れば引き返したい。
だが引き返すわけにもいかない。
青龍殿を守る渦の様相に変化が見られるからだ。
……テオンの言葉通り、青龍殿の結界が薄れたのか、渦の勢いがなくなる時間帯が近づいていた。