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吼える月
第24章 残像
「浮石での土地にするにあたって、一番の問題はそこだったみたいだ。だけどそれを、変貌する前のジウが解決したと聞いてる。どんな方法かはわからないけれど、きっと青龍の力かなにかを使ってじゃないのかな」
テオンの情報も口伝えらしく、曖昧だった。
「おいおい、だったらジウ殿が青龍の力を使い続けているってことか? それはありえねぇわ。幾らあの人が化け物じみていても、この蒼陵全体に力を放出し続けるとなれば、とうに体力気力無くして朽ち果ててるぞ。そうなったら、至る浮石の建物が、いや街ごとぷかぷか移動しててもいいし、なにより……」
サクはイタチの言葉を思い出す。
この国で、同胞の青龍の力を感じない、ということを。
青龍の力を感じ取れないということは、青龍殿を常に守り、仕掛けで人為的に制御出来るという、不思議な渦の存在も同様だ。
「つまり、今の蒼陵やら青龍殿に関わっているのは、神獣以外の力、ということか。それはイタ公が感じ取れない種類の。テオン、お前、自分と同じような特殊な力を持つ奴を知っているか?」
テオンは首を横に振る。
「第三勢力がある、のか?」
考えれば考える程、結論は出て来なかった。
船を上陸しやすい浅瀬に停め、テオンとサクは降り立った。
生温かい風がサクの髪を揺らす。
「……?」
その時なにか視線を感じて、サクは警戒を高めて周囲を見渡したが、動いているものはテオンと波しかなく。そして妙な気配はもうなくなっていた。
「………」
「サクお兄さん?」
「……なんでもない、さあ行こう」
感じた気がしたのだ。
生きている、人間の視線を――。