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吼える月
第24章 残像
「はあああ!? 浮石の上に建っているんだろう、この建物は」
「多分、僕の考えだけれど。浮石の中心を刳り抜いて、そこに、透明な素材を嵌め込んでいるんじゃないかな」
「簡単に言うが、大勢の体重で底が抜けるぞ?」
サクは足先で、床をこつんこつんと叩いてみせる。
「お兄さんは、輝硬石っていうの、知ってる? これは、凄く硬い特殊なものを加工してるんだ」
サクは目を細めた。
「知ってるが、これがまさか……。だがあれは特殊だから、中央が独占してるはず。しかも透明なんてこんな技術……」
「移転前の青龍殿に、中央から非公式に父様に使いの者が来て。それで暫くしてこの透明な輝硬石が大量に運び込まれたんだ。なにを話して輝硬石を貰うことになったのか、それは僕は聞かされていない」
「中央……? 誰だ、そんなことをしてるのは」
「なんでも、皇主の三男、だとか言ってたな。スンユとかいう」
「三男? スンユ……? 聞いたことねぇな、親父からも」
「皇主には沢山の妾との間に、色々子供がいるからね。そんなのいちいち覚えてたら際限ないよ。ただ僕もサクお兄さんも、最強の武神将のハン殿も知らないとなるのなら、名も顔も知られた長男や次男とは違い、三男であっても皇位継承権はないのかもしれないね。母親の身分が恐ろしく低いとか、その子供の素行自体が問題ありとか」
「それが、使いの者を通じて輝硬石の取引を持ちかけたと?」
「多分。その怪しい取引に父様が乗じたやをだと思う。それ以外に、変わった出来事はなかったからね。ああ、あとスンユとほぼ同時に、僕は見ていないけれど、黒陵の国からリュカっていうのも来たようだよ」
「リュカが――っ!?」
サクの険しさを増したサクの目が、睥睨のように細められる。
「わわわ、なんだよ。僕は聞いただけだよ、父様がそれからちょっと変になって。その後スンユの使いが来て、輝硬石が来て。青龍殿が移転となった」
リュカはやはり蒼陵に来て、祠官やジウと会っていたのだ。
そしてそれからの蒼陵の異変――。
一体、なにを話に来たのか。