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吼える月
第24章 残像
 

「う、うわ、なに、なにお兄さん!?」

「俺の記念すべき初挑戦の"治癒"だ。ありがたく受けやがれ」


 サクは、体内に漲(みなぎ)る玄武の力を使う要領で、テオンの額に繋ぐ手と、テオンの手を握る手に集中させる。

 不得意な力の巡らし方は、今まで不可抗力的に襲う危険な場面でなんとか本能で成功に導いていたものの、こうして心を落ち着けさせた状況で力を使うのは初めてのことだった。

 それでも、なんだかこのテオンという、年上なのか年下なのかわからぬ不遇な祠官の息子の頑張りを、見過ごすことは出来なかった。

 父親を大事にしたい子供の気持ちは痛いほどわかる。

 自分にはもう父親はいなくなってしまったが、テオンにはどんな父親であり、存命しているのだ。生きている限り、どうしても和解する機会を与えてやりたいと思うサクには、少しでもテオンに元気を与えてやりたかった。

 身を削ってばかりの彼に、少しでも慈悲深い神獣の恩恵をと。


 サクの両手を通して、玄武の水色の力がテオンに流れ込む。


「僕は、青龍の……」

「うるせぇよ。青龍は玄武のダチなんだよ。ありがたく受け取ってけよ」


 テオンに巡る玄武の力が、不調だったテオンの体内の気の流れを整えていく。それにつれてテオンの紅潮した顔色は引き、気怠げだった顔に生気が戻る。

 だが――。


「なんで泣く? 痛いのか? 俺、やり方間違えたか?」

 本能でそれらしき処置をしたつもりだったのだが間違えてしまったのだろうか。だがイタチと連絡を取ろうにも、やはりざあざあと砂が流れるような音に邪魔されてしまう。
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