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吼える月
第24章 残像
「違う……」
テオンは、涙が零れた目を手で拭い、そして笑った。
「親も見捨てる僕を、優しいなってお兄さん。やっぱりお兄さんは、慈愛深い神獣に愛された武神将なんだね。武神将っていうのは、そうやって人を助けてくれるものなんだなって思って」
「……おう。だから早くこの国の武神将を、なんとかしようぜ。俺が知るジウ殿は、そんな奴じゃねぇからな。俺がなんとかしてやる」
「なんだかさ、お兄さんなら……あの恐い顔のジウをなんとかできそうな気がしてきた。最初はどう見ても、迫力負けしてると思ったけど。なんだかお兄さんツメ弱そうだし、ジウが凄んで必殺技でも繰り出したら、もうそれだけで怯んで負けちゃう……」
「昔の俺は俺じゃねぇ。ああ、独り言だ」
そしてサクが再びテオンを肩に乗せた。
「お兄さん、僕ちゃんと歩ける……」
「恐いんだろう? その代わりしっかり監視してろ。俺はしっかり歩く」
「わかったよ。体力だけの取り柄のお兄さんはこれで本領発揮できるしね」
「……お前、ここから落とすか、ああ!?」
「冗談だよ、じょうだ……」
かちゃり。
それは突然のこと。
あまりに不可解な機械音が、ふたりしかいないはずの屋敷に響いた。