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吼える月
第24章 残像
ゴロゴロゴロゴロ……。
勢いを増すばかりの鉛玉は、こちらにまっしぐら。
「どうする、こんな大きいの、お兄さんでも飛べな……」
――いいか、サク。すべてのものには重心というものがある。その重心をそらせば、どんな大きいモノでもどんな素早いモノでも途端にバランスを崩して、脆く崩れ去る。
「なに立ち止まってるの、潰れる、潰されちゃうよ!?」
テオンが悲痛な声を上げ、サクの頭を両手でポカポカ叩いた。
「お兄さん、お兄さん、逃げなくちゃっ!! とりあえず後退して、横に出れるところまで!!」
「そこまで退くと見越された罠なら、退くだけ思いツボ。ならばここは」
そして――。
「飛べねぇなら、壊せばいいんだよ、は――っ!!」
ドガッ!!
サクは直感的に、勢い良く転がるその鉛玉の重心を見つけ出し、その一点に掌打を打ったのだった。
「お兄さん――っ!!」
絶叫を上げるテオンの前で、ぱかっと両側に割れた巨大な鉛玉。
テオンがへなへなとサクの頭上に崩れた。
「僕、ちびっちゃいそうになった……」
「ちびらしたら引きずり下ろすからな!?」
「うん……。だけど……武神将って……。度胸あるというのか無謀だっていうのか……。僕、お兄さん、甘く見てたかも……」
「は、ちびらしたい!?」
「違うよ!! 先に行こうよ、もう先に行くしか道はないんだし!!」
「俺達が祠官の部屋に行こうとして突然罠が動いたのか、それとも誰かが見ていたから罠が発動されたのか。とにかく……これは誘いだ」
状況が掴めぬ今。
この危機的な罠の影に誰かの存在があるのなら、その存在を掴むためにあえて罠に乗ろうとサクは思った。