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吼える月
第24章 残像
「いいか、テオン。ここから俺達はひとつだからな。少しでも呼吸が乱れたら、2人とも死んじまうかもしれないからな。お前は必死で周りを観察しろ。後ろもちゃんと見てれよ!?」
「うん、わかった……。しかしなんでまた、僕が住んでいたあんな安全な場所が、今なんでこんな罠が動き始めたんだよ……。今まで何もなかったくせに」
「なにもないのはお前が侵入者だからと見逃されていただけかもしれねぇ。今は俺という外部の人間が混ざっている。それに、やはりあの闘鬼のジウ殿がいて、不用心な警護を許すはずがねぇんだよ。どんなに腐ろうとも、やっぱり武官でこの屋敷を守ろうとする使命は無くしちゃいねぇ」
「はぁ……。お兄さんがいてよかったんだか、お兄さんいない方がよかったんだか。だけどこうなったらもう僕の未知なる世界だから、本当に成り行き任せに行き着くところまで行くしか……ねぇ、なに今の唸り声。……後ろ? え、なんであそこ……扉!? しかも開いて……あ、ああああああっ!!」
「今度はなんだ、テオン!!」
「か、壁じゃなく扉、あ、あああああっ!!」
「だからはっきり言え!!」
ガルル……。
「おい、なんだこの不穏な音」
「お、お兄さん……」
ガルルルルル……。
「テオン、3、2、1……」
「狼だああああっ!! しかも沢山っ!!」
獰猛な殺気が、一斉にサクの背中に向けられた。
「はああああ!? なんでお前の元家に、しかも今まで壁だったところに、殺気めいた狼が居るんだよ、あの声なら十匹以上だろ!? そんなに飼ってたのか!?」
「僕知らないよ、だけど……お兄さん、来た、来た来た来た来た来たっ!! 走れ、走れ――っ!!」
サク達は、突如開いた部屋から現れた、何十匹という飢えた狼に追い立てられ、全力で逃げた――。