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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
 

 カリと、陰茎に歯を立てれば……リュカの体が跳ねた。

 だが彼からは悲鳴も非難も声が出ぬばかりか、視線すら寄越さない。


 ただぼんやりと月を眺めているだけだ。


 リュカ、今……なにを考えているの――?


 父を殺したこの中で、憎い娘といえども少し前までは許婚だった女に咥えさせて……それでもびくびくと震えて興奮して。


 そんな無防備な姿を晒して、あたしがこれを噛み切るとは思わないの?

 あたしがその小剣を奪って、リュカを突き刺すとは思わないの?


 見くびられているのかもしれない。

 自分の攻撃など簡単に凌げるという、絶対的な自信があるために。


 そう蔑まれているのが悔しくて。

 こんなに艶めいて体は反応しているのに、それは男の生理現象だというように……奉仕する彼女自身に関心を見せないのが悲しくて……。


 形だけでも許婚だったあたしは……ただの性処理の道具?

 もう、顔を見たくないほど……嫌なんだ?


 憎いから?

 はしたないから?


 ……どうでもいいから?



 胸が、刃で貫かれたかのように苦しみに激しく痛んだ。


 リュカから消え去った自分という存在。

 では自分の中で、リュカという存在は――? 


 
――お父様あああああああ!!



 そんな時だった。



「尻を上げよ」



 そんな上擦った声と共に、裾を捲られ、高く持ち上げられた臀部。



 ユウナが、凌辱の意味を本能的に理解すると同時に――



「――っ!?」



 熱く固いものが、激痛を伴って胎内を貫いた。
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