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吼える月
第24章 残像
「たかだか青龍の武神将の隠し子だという立場が、一国だけに留まらずに倭陵全体に及ぶほどの切り札的なものになるとは、俺もシバも自惚れちゃいねぇ。あくまで蒼陵という"身内"にだけ有効な切り札だろう。
ましてや見たこともねぇ相手に、培ってきた恨みねじ曲げて大義を掲げるほどの正義、俺達が抱えているように見えるか?
ご大層なことを考えるくらいの頭があるのなら、俺達がそんな簡単に鞍替えする奴ではないというくらい、とうに見抜いているだろう。
その上で切り出したということは――。
はったりかます真意はなんだ?」
シバの鋭い眼差しに同調するように、かつてサクも怯んだ……迫力あるジウ系統の顔が、凄みに満ちて獰猛さを見せる。
「真意もなにも、利用という言葉が一番率直かと思ったが、それで語弊があるのなら、私と不戦同盟を結ぶと考えてくれてもいい」
だが飄々とした態度で受け流すスンユに、屈辱だと思ったのか、いきりたって威嚇し始めるギルの肩を叩いて抑えたのは、ひとつに緩く結んだ深い青の長髪をさらりと揺らして、一歩前に出たシバだった。
「つまりは、お前の動きは、俺らの今後の妨げになる可能性がある…ということか」
言葉尻からして、ふたりはもう、スンユに敬意を示していなかった。
あるのは、警戒にも似た胡乱な表情。
「皇主に認可された青龍の祠官や武神将ではなく、オレ達を"手駒"に選んだ理由はなんだ」
端正な顔に瞬くシバの目が、剣呑な光を灯して細められる。
超然と笑って、スンユは言った
「"防衛"は国の発展のためにならない。むしろ、枷になる」