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吼える月
第24章 残像
「防衛?」
「そう。すべては青龍の武神将の頑ななる"過信"ゆえに。そして近く結論が出るだろう。私の意見が正しいのか、青龍の武神将の意見が正しいのか」
含みある言葉に、シバは聞き返そうと唇を動かしかけたが、なにかを考えるようにして唇を引き結ぶだけに留めた。
シバの様子から、スンユに対する好意的なものが見えぬユウナは、張り詰めたような場の雰囲気にはらはらとしながら、無意識にイタチの長く白い尾を手で引っ張る。
嫌がるように、その尾がユウナの手から逃れようと動くが、ユウナはそちらに目を向けることなく、直感だけでその尾を直ぐに捕まえては引っ張り続ける。
「……どこに潜めている」
シバの問いかけに、スンユはただ笑う。
「知っていたのか」
「船の大破の具合から、派手な座礁の具合だったと報告はあった。だが満潮が近い海は水位が上がり、そしてここいら周辺においては、水面下の岩礁はあってもかなりの低位にある。船が潜水して進んでいるのならまだしも、岸もなにもない海に浮かんだ船が、海のど真ん中でなにに座礁するという?」
「大魚とか、船と船とは考えないのか?」
「元々潮流の具合で大魚は寄り付かないが、念のため大魚避けの餌撒きや嫌がる音をも日常的な仕事にさせているため、ここ周辺では大魚は姿を見せない。そして船同士の場合だが、子供達から、複数の船の形跡はなかったとの報告がある」
「子供がわかるのか?」
せせら笑うようなスンユに、シバは表情を硬化させた。
「子供達をなめるな。人生経験はお前より下でも、海に関する観察眼や知識は、お前より上だ」
スンナは愉快そうにくつくつと笑い、動揺している様子もないが隠すつもりもないようだ。即ち、肯定している態度だった。