この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
崩れゆく――。
13年で培ってきた、愛しい姫を慈しんで護っているという自負は、塵埃が舞い上がるかのように、儚い自己満足にしか過ぎぬことを思い知らされた。
香しく匂い立つ花を、美しく咲かせるまでに護り通した結果、望まぬ誰かに無残に散らされた。
散らせるために美しく守り通してきたわけではない。散る様を見るために、護衛をしていたわけではない。
あの……凄惨で痛々しい表情を見るために、傍にいたわけではないのだ。
破瓜の痛みに歪んだユウナの顔は、流れる涙でぐちゃぐちゃで。それでも気丈にも、その場に崩れ落ちようとはしなかった。
穢れを知らぬ一国の姫が、初めて目にする男の生々しい性器を口に入れられ、そして同時に暴漢に純潔を散らされていながら、彼女は抵抗をしなかった。
抵抗すれば、サクの命にかかわると思っているからだろう。
それがわかるからこそ――。
泣きたいのに涙が出て来ない。
叫びたいのに声が出てこない。
誰からも愛される姫だった。
誰よりも幸せになるはずだった。
誰よりも自分が幸せにしたかった。
姫様、姫様、俺を見ろ――っ!!
少しでもこちらを見てくれれば。
そしたら動かぬ全身で、伝えるのに。
自分など捨て置いて、逃げろと。
自分にはユウナに体を張られる価値はない。
そんなユウナを見て、自分は生きてなどいられないと。
だがユウナの目はこちらを向くことはなく、自ら淫猥な宴に身を投じてしまった。