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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
 すべては自分の不甲斐なさが招いたことだと、サクは軟弱な自身への怒りに狂い出しそうだった。


 どうして体が動かない。

 どうして声が出せない。


 こんなことを望んで、自分は護衛をしていたのではない。

 こんな事態にさせるために、ユウナを諦めたのではない。


 ただユウナに笑っていて欲しかったから。

 ユウナが幸せであって欲しかったから。


 そのために、自分の想いを犠牲にしてでも、そのユウナの幸福に満ちた顔を、間近で見続けることが出来たのなら。


 そう思っていたのに……。



 それでも、愛する女とひとつになれる男達が羨ましい。

 どんな時でも、ユウナに愛される銀が羨ましい。


 唾棄すべき浅ましい男の性が……またサクを苦しめる。


 ユウナが艶めかしい女体を持つ存在として、肉体的に意識し始めたのは……山賊を討ち取った時だった。

 妓女に扮したあの艶めかしい体に、サクは初めて男として体を熱くさせ……そしてそんな浅ましい自分がいることを必死に隠してきた。


 そして今、ユウナの体はさらに女のものとなっていた。


 黒髪を散らす白い肢体。

 摘み取ってくれと言わんばかりの……サクの記憶しているものよりも大きく、美しく育った乳房。

 金の男が揉めば形を変えながら、その柔らかさを強調させ……その感度のよさを証明させた。


 なんと艶めかしいユウナの姿――。

 ユウナへの愛を捨てきれずにいるサクにとっては、ユウナの乱れる姿はあまりにも刺激的な光景だった。
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