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吼える月
第24章 残像
「え、お兄さん。お兄さんがやけに自信満々だったのは、全部僕にフるつもりだったの!?」
「勿論。俺には、門と石で成り立つ術に関する知識はあるが、回避策の知識はまったくねぇ」
「……お兄さん、威張っていうこと、それ」
「俺にはお前がいる。いけるだろ、お前なら。祠官になろうとひたすら学んできた知識、ここで大いに発揮しろよ。無駄にしたくねぇだろ?」
「無駄……。ひとの傷にぐりぐりとくるねぇ!! あははは、だからお兄さん大好き。下手に気を使われると僕も居心地悪くなる」
「またまた奇遇だな、俺も気を使うと発狂しそうになる」
「あはははは。本当に奇遇だね。じゃあ、お兄さん。僕の案を」
テオンの声の調子が真剣になった。
「さっき回って確かめた燈篭、消えていた燈篭のものは、八門八陣、意味する方位はすべて吉を表すものばかりだった。つまり、凶を含むものだけが灯がついていたんだ。
ちなみに、八門で吉を示すのは、休、生、景、開。八神では、符、陰、合、地、天。消えていたのは、八門と八神がすべてこの組み合わせだけだった。
多分だけど、燈篭の灯がついている凶が入り混ざった組み合わせ如何で、僕達は毎回違う罠の道を通りながら、ぐるぐると回っていたんだと思う」
「にょろ文字のくせに、随分と凝った……。にょろ文字に気づいたものは、燈篭をなんとかするために邪魔な罠をなんとかしようとするだろうから、罠をすべて解除したら、違う罠発動…か。
なんだか相手の掌に転がされてはいる気はするが、強制的に振り出しに戻された今、さっきとは違う燈篭のつき方に、毎回燈篭の灯の位置が変わっていただろう可能性は高くなったな。燈篭自体はどうだ?」
手前の灯のついた燈篭にある古代文字を、目を細めて見たテオンが言う。
「変わってる。今のは"驚"に"蛇"だ」
「入り口に戻ると同時に、燈篭まで入れ替わるのか。またひとつひとつ読んでいかねぇといけないのかよ」
サクは面倒臭そうに舌打ちした。