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吼える月
第24章 残像
「うわわわ、お兄さん、落ち着いて。僕頭叩き過ぎちゃて、壊れちゃった!? お兄さんっ、落ち着いてよ、お兄さんっ!!」
サクの頭の中は、よからぬ不安に満ちていた。
もしリュカがユウナの元に行き、もしリュカがユウナの呪いを活性化させたり、金の男と共に凌辱を繰り返したら。
リュカを信じたいという気持ちよりも、ユウナの激しい動揺を感じ取ったがゆえに、嫌な想像しか出来ない。
「ぐうすかイタ公、目覚めやがれ――っ!!」
青龍殿自体にかけられている結界の阻みを吹き飛ばすように、サクから放出された力は、燈篭の火をすべて消したが、それでも火はすぐについてしまう。
「イタチよりもお兄さんが目覚めてよっ!! とにかく動け、ここから……ああっ!! ひ、皹……あれ皹だよ、この床破れてへんなの出てくるよ!!」
「イタ公――っ!!」
「お兄さん――っ!!」
その時だった。
『我は目覚めておる。騒ぐではない。これから姫の襟巻きとなるゆえ、小僧との交信を完全遮断することを予告する』
イタチの心底嫌そうな声が、サクの頭の中に響く。
「姫様の襟巻き!? 一方的に遮断しておいてから、なにが予告……」
『端的に言う。我がいるから姫は無事だ』
「無事でどうして姫様が動揺するんだよ!?」
そして――、
『姫の動揺は、リュ……』
声は消えた。