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吼える月
第24章 残像
「該当する燈篭の火だけ"同時"に消したら、あらゆるものが再生ばかりするおかしな術も強制終了されるかもしれねぇ。俺はな、テオン。あの餓鬼共もまた、新たなる罠のひとつなんだと思う」
「罠……? 矢の代わりの?」
「ああ。餓鬼は神出鬼没だが、海の中から突然現れるとは、出来すぎていると思う」
「だけど、お兄さん……床の下から気配がするって」
「気配がしたのは"生者"のものだ。あんな化け物の殺気じゃねぇよ。俺の心の中が術に影響されて餓鬼の形の罠になったのかもしれねぇ。だから仮に餓鬼を滅多斬りして先に進んでも、餓鬼は何度も再生して増殖すら始めるかもしれねぇ。餓鬼は幻としても、襲われて俺達が無事だとは言い切れねぇし、そうなる前に、術を解く」
「……」
「すぐ火がついたにしても、消えた事実には変わりねぇ。だったら瞬時に正解見せたら、瞬時に術が解ける……俺はそれに賭ける」
「でも……」
「違うと言い切れる理由はなんだ?」
「う~……。じゃあお兄さんが、そうだと言い切れる理由は?」
「ただの直感だ」
「うぅ……」
だが、その直感こそ、ハンが鍛え上げたサクの武器。
生存本能が示す、"正解"の在処――。
「わかった、お兄さんに僕も賭ける」
「おう。それでひとつ問題が勃発だ」
「なに!?」
「どの場所の燈篭を消せばいいのかわからん」
テオンが大きくため息をついた。