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吼える月
第24章 残像
「そうだよね、そこ大問題だよね。さっきは最後まで燈篭見たけど、今回は最後まで見ていない。そして燈篭の配置は変っているし、消えていた燈篭の数も不明。だったら、その問題を解決する方法はもうひとつしかないね」
「そういうこと。また実際見るしかねぇ。……さぁ、お前の出番だ。俺があそこまで連れるから、その途中で出来るだけ早く、該当燈篭の場所を掴め。正解の数がわからないんだから、お前の正確な解読と記憶力にかかってる」
「同時に消す方も大変だと思うけど……。だけどいいよ、やるよ。やってみせるよ。僕だって男だ。やる時はやるよ」
半ば自棄的になってでもいるような口調のテオンであったが、その表情は再び大人びたものとなる。
「"正解"燈篭の古代文字は決まっているから、それと合致するかしないかの単純な問題になる。燈篭の間隔はあいているから、その場で見るより観察時間確保できるし。お兄さん小走り程度でお願い。その速度で僕、見て覚えるから」
「了解。では」
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「快調に進んで来たところ、滅法気分が削がれるが、話題の"あいつら"が、よたよたとあっちからくるな。"あ~"だの"う~"だのうるせえ、子供みたいな年寄。あ、テオンじゃねぇぞ。似た身長だけど」
「わかってるよ!!」
「鈍臭ぇあいつらはな、"きぇぇぇっ"となったら突然動きが速く獰猛になるから気をつけろ。食われたら、お前も餓鬼になって"きぇぇぇぇっ"となるからな」
「そ、そそそそんな気味悪いのに近づきたくないよ。お、お兄さん、あとみっつなんだ、お兄さんの目なら、ここから見えるよね?」
怯えきったテオンはゆさゆさと、サクの頭を揺らす。
笑うサクが示す指の動きを、テオンがすべて読み取った時、屋敷が傾き始め、水が奥から流れてくる。
「餓鬼が床割ったために、浸水したのか!? そのために屋敷が…崩れているのか!?」
「お兄さん、来るよ……へんな奴らが流水を滑り台みたいにして、来る!!」
聞こえてくるその声は。
無気力さを全面に押し出した、低い唸り声。
サクが黒陵で何度も聞いた、餓鬼の声だった。